今和次郎と積雪地方農村経済調査所(雪調)
今和次郎
弘前市生まれ(1888年~1973年)
考現学の創始者として知られています。その他にも建築家、民家研究、生活学の創始者など、多様な分野で活躍され、多くの業績を残しています。
今和次郎が雪調と関わりを持ったのは、わずか7年ほどの短い期間でしたが、この7年間は、雪調を介して委託された「東北地方農山漁村住宅改善調査」「雪国農村住宅改善案設計」など様々な仕事を精力的に行った時期であり、この時期に取り組んだ調査や実践が、今和次郎にとって、生活学や家政学といった戦後の学問の方向付けに大きく影響したとみられます。
このように、今和次郎が「東北」「農村」「生活」といった大きな文脈の中で実践的な課題に取り組み、めざましい成果をあげた場所であるとともに、その後の今和次郎に大きな影響を及ぼしたのが雪調だったともいえます。
試験農家(実験農家)
試験農家は今和次郎が設計し、雪調が残した特徴的な業績の一つです。
この試験農家は、積雪地方の農村に住む農家の生活改善を図るための検証実験として、建築され、実際の農家に住んでもらいながら検証実験が行われました。
今和次郎の仮説である「①屋根雪の処理に要する作業から解放されることができれば、②その浮いた労力を現金収入の労働に充てることができるのではないか」という内容を検証するために昭和13年に雪調の敷地内に建てられました。
当時の一般的な農家の家屋は居住スペースに牛や馬なども同居していましたが、住宅に階層を設けることで家畜との居住を避けることができました。他にも排煙機能をつけるなど、衛生面での課題も考慮されていました。
残念ながら、この試験農家は現存していませんが、急勾配な屋根や採光の窓など多くのエッセンスが現存する雪の里情報館に残されています。
これらの発想や取り組みは、今和次郎が考現学に代表されるような、さまざまなくらしの営みを“ひろい心でよくみる”ことをとおして、これからのくらしのかたちを、そこに生きる人々とともに創造しようと模索し続けた今和次郎の生き方がみえます。
工学院大学「今和次郎コレクション」の寄託について
工学院大学には、民家研究から考現学、生活学の創始にいたる多彩な分野で研究活動を続けた今和次郎の蔵書と研究資料が保管されています。
これまで記載した今和次郎と雪の里情報館の繋がりが切っ掛けとなり、令和元年12月に、市制施行70周年を記念して、工学院大学より新庄市へ「今和次郎コレクション」の一部が新庄市に寄託されました。
これにより、今和次郎コレクションの図書約3,000冊とデジタルアーカイブ約150点が雪の里情報館の中で閲覧可能となっています。
「今和次郎コレクション」のご利用について
今和次郎コレクション(図書)については、下記の≪今和次郎寄託図書リスト≫より、書名等をご確認いただけます。
今和次郎コレクション(図書)のコピー(複写)をご希望の場合は、申請書を提出していただき、工学院大学の許可を得てからとなります。
デジタルアーカイブは雪の里情報館1階雪国ライブラリー内の専用パソコンのみで閲覧可能となります。
デジタルアーカイブ資料はコピー(複写)、写真撮影はご遠慮させていただいております。
今和次郎と雪調が作った文化展 開催中
さまざまな暮らしを調査することで、これからの暮らしのかたちを創造していこうとした今和次郎。この展示は、今和次郎を知るとともに、これからの地方の農村に活かすヒントを見つける展示です。
今和次郎と雪調の関係をまとめたパネルや関連図書をはじめ、今和次郎の視点・目線を味わえます。
【場所】雪の里情報館 1階雪国ライブラリー
【期間】2020年12月20日(日)まで